2011年11月24日木曜日

浪江町の甲状腺被曝、平均5ミリシーベルトは本当なのか

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下の記事は、一見安心できるような内容ですが、どうも信用できません。

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浪江の甲状腺被曝量、チェルノブイリの千分の1

(引用)
東京電力福島第一原子力発電所から20キロ前後に位置する福島県浪江町の住民の甲状腺被曝量は、チェルノブイリ原発事故後の周辺住民の被曝に比べ、1万~1000分の1だったことが、札幌医大の高田純教授(放射線防護学)の調査でわかった。18日に神戸市内で開かれた日本放射線影響学会で発表した。

原発事故で施設外へ放出される放射性物質のうち、ヨウ素131(半減期約8日)は甲状腺にたまりやすく、被曝量が多ければ甲状腺がんを引き起こす可能性もある。

高田教授は事故後の4月8、9日、同県内の避難所で、18歳~60歳代の浪江町民計40人の甲状腺被曝量を測定した。結果は3・6~7・8ミリ・シーベルトで、平均は約5ミリ・シーベルトだった。一方、チェルノブイリの周辺住民は、数シーベルトから50シーベルトとされている
(2011年11月19日00時31分  読売新聞)

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「チェルノブイリの周辺住民は、数シーベルトから50シーベルトとされている」

まず、これについての説明が無いのですが、おそらくは、通常言われる被曝量ではなく、甲状腺等価線量のことを指していると思われます。これは計算がややこしくて私もあまり理解できていないのですが、甲状腺等価線量は全身の実効線量の20倍ほどの値で表されるようです。

数シーベルトから50シーベルトというのは実効線量で言うと、即死、あるいは数日〜数ヶ月で死亡する数値です。もし、記事の数値が実効線量を指していたら、チェルノブイリで即死した人と比べていることになります。それは、さすがに無い、でしょう……。

というか、こうした実効線量と甲状腺等価線量の計算の違いについての情報こそ、書くべきだと思うのですが、記事では何も説明されていません。

この記事で怪しいのは、浪江町の住民の甲状腺被曝量というのが「チェルノブイリの周辺住民」と同様の基準で計測されたものなのか、ということ。2つの値を比べるときには同基準を用いることは当たり前のことですが、どうも信用できない。というか「チェルノブイリ周辺」というのが、どの程度の距離を指しているのかも明記するべきでしょう。

次の疑問は、被曝した日からのヨウ素の半減期が考慮されているのか、ということ。記事には、計測したのは4月8日〜9日と書かれています。浪江町の住民が最も多く被曝したのは爆発のあった3月12日から数日間です。その被曝日に遡って積算されているのか。

もしかしたら、半減期を考慮した概算値ではなく、4月8日時点からの計算値を出しているのではないか。もしそうなら、記事の数値は、本当の被曝量の十分の一以下になる可能性があります。

以前、文科省からSPEEDIの結果として、1歳児の甲状腺等価線量が出されました。

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を活用した試算結果
http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/index.html

このリンク先に、こんな言葉があります。「原子炉の状態が比較的安定となるのに従って大気中のヨウ素131濃度は低下しており、このために積算線量は4月6日以後、あまり増加していません。」

これを見越して、4月8日〜9日に計測したのではないか、と見えてしまうのです。

そしてもうひとつ。記事では「18歳~60歳代の住民を検査した」とありますが、放射能に対する感受性は若いほど高いとされているのに、なぜ18歳以上の人を対象にしているのか。同量のヨウ素131でも、大人と子供では被曝量は10倍近く異なるとされています。妊婦、0歳児、幼児、こそ、精密な検査が必要なのではないのか。

以下は実際のSPEEDIの試算結果のPDFです。

3月12日午前6時から4月24日午前0時までの積算線量
http://www.nsc.go.jp/mext_speedi/0312-0424_in.pdf

クリックで拡大

これによると、浪江町は500ミリシーベルトの範囲に入っています。1歳児のデータであることを考慮しても、記事の数値とあまりに開きがあります。10倍で見積もれば、大人でも50ミリシーベルトになります。

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以下のサイトに、ベラルーシ国民の年齢別の甲状腺被曝線量分布が掲載されていました。

チェルノブイリ事故による内部被曝と防護対策の有効性
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/JHT/JHT9511.html


1シーベルト=100レムとのことなので、この表によれば、半数が0〜300ミリシーベルト、20%程度の人が300ミリシーベルト〜1シーベルトの範囲に入っています。SPEEDIの浪江町の試算と近い数値です。

最初の記事にあるチェルノブイリ周辺住民の数シーベルト〜50シーベルトという被曝量は、この表には当てはまりません。

ベラルーシでは、事故から25年経った今、20歳〜25歳の世代が極端に少なく、当時の子供から生まれた子供に心臓の障害などの健康被害が出ています。彼らに現れているのは確定的影響(急性障害)ではなく、確率的影響(晩発性障害)です。

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この記事のように、ミスリードと疑われてもしょうがない報道は、あちこちに見受けられます。安心っぽい内容でも、よくよく見ると、おかしい。

もっとも、昆布や魚介類を多く摂取している日本人は、もともと甲状腺を守るヨウ素を持っているため、ベラルーシやウクライナの人たちよりもヨウ素131の影響は受けにくい、という言説もあります。そうした違いで、被曝量が少なくて済んだのなら、本当に良いのですが……。

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追記:2011/11/23 6:10

最後に、この記事の調査を行った札幌医大の高田純教授が自ら動画編集された、福島への応援動画を紹介しておきます。


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